スイスフランショックで、何が、どうなるん?

 

先週の経済ニュースと言えば

「スイスフランショック」だった訳ですが、、、

これ、どんな意味があるのか、報道等から伝わりましたか?

 

僕はFXやってないから関係ないとか、

やっぱり運用は怖いなとか、

でも、ヨーロッパの事だから関係ないかも、とか、

 

twitter上では、「俺、自己破産・・・」的な話しが溢れ、

(儲かった話もありますが、今回はまぐれですよ、、、ありゃ博打だって)

ぶっちゃけ、知っている同僚から、相談を受けましたが、、、

証拠金の追証が払えないなら、、、

自己破産以外に選択肢はありません。。。

 

まあ、金融機関で自己破産したら、免許停止ですので、事実上の退職。

ちょっと、悲しいですが、これ、現実です。

 

さて、TVのニュースはもちろん、ネットの配信を読んでも、

何かどう問題で、今後、注視するべき点は何なのかは

あまり触れられていないように思います。。。

 

なので、自分なりにまとめてみました。

これ、やっぱり一大事なんですよね。

 

2015-01-19-09-30-16_deco

 

スイス中銀のこれまでのスタンス

では、事実から、ひとつひとつ見ていきましょう。

スイス中銀が行ったことは、

「スイスフランのユーロとの交換レートの上限規制を撤廃した」

という事を発表し、即日実行したということです。

 http://info.finance.yahoo.co.jp/fx/detail/?code=EURCHF=FX

 

この事によって、マーケットが反応して、スイスフランが急騰しました。

 

これは先進国の為替相場としては大変な動き方で、ちょっとやそっとで

起きるものではありません。崖から、急落ですよね。。。

 

まず、以前からスイス中銀は、スイスフランの防衛ラインを

1ユーロ=1.2フランとして死守してきました。

それは、なぜ?

 

スイスという国

スイスという国は、日本のように、国内に1億2,000万人もの人口と、

それに基づく大きな国内市場を抱え、

GDPにおける輸出依存率が、15%ほどの国とは違います。

 

スイスは、人口がわずか800万人ぐらいで、

完全な輸出立国です。

 

つまり、輸出で稼ぐしかない訳ですし、当然輸出依存率が高く、

ちょっと調べればわかりますが、GDPに占める輸出の割合は

40%近くもあります。

 

そもそも、輸出依存度が低い日本で、円安政策をとった場合、

むしろ原材料等の輸入物価上昇によるマイナスが大きいのでは?、と

繰り返し僕は発信してきておりますが、スイスはそうではありません。

 

ある程度、スイスフラン高になって、

輸出競争力がなくなれば、

それは国そのもの「存続」に関わる事となります。

 

だから、1ユーロ=1.2フラン以上のスイスフラン高になれば、

スイス中銀は徹底的に介入したし、無理やりでも、それ以上

スイスフラン高になることを阻止しますよ、と宣言し、

実際に、実行していた訳です。

 

実際にどのような動きがあったか、考えればわかります。

これを、実際にどのようなオペレーションをするのか、見てみましょう。

 

スイスフランがこれ以上、対ユーロで高くなっては困る訳ですから、

当然、スイス中銀自らがスイスフランを売って、

その分ユーロを買いまくる、という行為になる訳です。

 

結果、ユーロ安・スイスフラン高になった時に、

無制限にユーロを買ってくれるスイス中銀という存在が、

今まではあった訳です。

 

これ、ユーロから見れば、これほどありがたいことはありません!

 

本来であれば、ECBがユーロ売りを阻止せねばならない局面であっても、

ある意味、勝手にスイス中銀がユーロを無制限に買うという訳ですから、

これほどおいしい話はありません。

 

その結果として、スイス中銀は、ユーロと言う通貨をほぼ一手に引き受けて、

溜め込むことになる訳ですよね。

 

スイス中銀のバランスシートの非常に大きな部分をユーロ、

もしくはユーロ建てのユーロ各国の国債が占めるという状況に、

実務上、こうならざるを得ません。

 

本来、ユーロという通貨、または欧州各国のクレジットが万全であれば、

あまり問題はないのでしょうが、、、違いますよね。

ただでさえ、そのあたりが危惧されている状態なのに、、、

 

この上、ECBが、いわゆるアメリカ型QEを導入することになる訳です。

 

簡単に言えば、欧州各国の国債が暴落することを防ぐために、

更にECBが国債を買いまくる訳で、ECBのバランスシートも当然膨らんで、

しかもその中身にはそれほどクレジットが盤石とは言い切れない、

スペイン、ポルトガル、イタリアなどの国債が含まれることになるのです。

 

盤石なドイツ国債だけを買っていては、

QEをやる意味が全くありませんから(笑)

 

と、単純に考えてみると、

 

通貨、あるいはそれを裏付ける国債のポートフォリオとしては、

ECBのバランスシートは相当、劣化する可能性があり、スイス中銀が、

そのユーロという通貨をこの1.2フランという防衛ラインで

死ぬほど買い集めることに合理性があるのか、

という問題になります。

 

下落するのがわかりきっている通貨を今後さらに抱え込むのは、

大変なリスクですよね。

 

また、そうなるのであれば、ある程度のスイスフラン高は我慢して、

紙切れになるかもしれないユーロの購入は、これ以上増やしたくない!

というのがスイス中銀の判断じゃないか、ということです。

 

もっと言えばユーロと言う通貨が危ないよ

というメッセージを、スイス中銀が認め、

発信してしまった、ともいえる訳ですよね。。。

 

これから起きるであろうECBによるアメリカ型のQE、

更には、ウクライナでのロシアとの問題、さらに、影響は小さいですが、

ギリシアのユーロ離脱問題などを抱えるユーロは、やはり危ない!

 

と、スイス中銀が判断したと言う事になります。。。

 

これがこそが、スイスフランショックの本質的問題提起

これは、「事件です、姉さん!」です。

 

スイス中銀自らが、どんなに不利なスイスフラン高になっても、

ユーロなどという危ない通貨を買わされるくらいなら、我慢します!

と宣言してしまった訳ですよね、、、

 

別の言い方をすれば、1ユーロ=1.2フランまでユーロが下がれば、

自動的にかかる安全装置が、取り外されてしまって、さらに、

その意味をルックスル―すると、今後、不測の事態が発生した時に、

ユーロはどこまで下がるんだろう、という恐怖が市場に出てきた訳です。

 

また、当然、スイスフランが上限を撤廃したために、

更に上昇余地が出てきたと見る投資家もいる訳で、、、

ますますユーロ売り・スイスフラン買いが横行するかもしれませんし、

当然、ユーロに対する需要が急激に落ちるかもしれません。

 

と言う事で、通貨の裏付けである国債のクレジットが各国で違うという、

本質的な問題を抱えるユーロにおいて、

安全装置が取り払われ、今後は、ECBによる、未曾有のQEが始まる訳です。

 

何となく、宗教という価値観の違いでの戦争の足音もするし、

戦時下においては格差は広がらないどころか、

調整されたというピケティの分析など、

やーな感じがしますよね。

 

さて、本当に、私たちはユーロに関係ないのでしょうか?

どこかの国の通貨にも、同じこととは言いませんが、

隠れている問題ではないでしょうか?

 

特に経営者の皆様は、まずは足元の資産構成を確認して、

その上で、ユーロの影響について仮説を立てて見てください。

多かれ少なかれ、何かの影響があることを、

予見できるのではないかと思います。

 

ちなみに、これ、全部、僕の勝手な、個人の意見ですから。

なんら仕事上の立場や、所属先の意見を代表するものではありませんし、

特定の投資を推奨するものでもございません。

The following two tabs change content below.
木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

記事を気に入ったらシェアをしてね

  • twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket