何となく「高金利」を選ぶんだけど、金融商品選びは、それでいいの?

先週末、ここしばらく下落をしていたトルコリラが20%ほど暴落しました。トルコに対する債権などを欧州の銀行は多額保持していますので、これに引きずられる形で、ユーロも下げ、新興国通貨であるメキシコペソや、ロシアルーブルも下がりました。

FXなどでロングをしていたとすると、強制ロスカットか、下手すりゃ破産、しかも週末何もできず、ということで今日を迎えている方もいらっしゃるかもしれませんが、とても分かりやす材料なので、あえて取り上げまして「金利」というものについてのお話をしてみますので、お付き合いくださいね。

 

トルコリラ、暴落の背景

トルコに関しては、首相から、さらなる権力の集中を目指す、エルドアン大統領の政策で対米新ロシア路線に、政治的に舵を切ってきました。

トルコ経済は以前からインフレが続いているものの、政策上、また、先の選挙対策上、金融緩和に政権そのものが誘導し、金利抑制策である中央銀行による「利上げ」ができず、、、

また、新ロシア政策の中で、ロシアとのさらなるパイプラインの敷設というエネルギー安全保障の転換、そして、NATO加盟国でもあるはずなのにロシア製兵器の購入など、そりゃまあ、米国との関係はトランプ政権になってから、悪化の一途をたどってきていましたし、、

トルコ中央銀行の総裁に、エルドアン大統領の〇〇娘婿を指名した段階で、こうなる可能性はかなり高くなっていました。

トルコ共和国ってこうゆう国なんだけど、その国の通貨であるトルコリラに、なぜ、自国通貨である円から変える方がいるのでしょうか?

貿易とかじゃなく、大部分が、円で自分の資産を持っていても金利が超低金利だから、トルコリラに変えておけば「スワップ金利が高い」から儲かるじゃない!ということだったわけですよね。

 

でも、トルコリラって、円よりも信用がありますか?日本で使えますか?って話なんですよね、、、いつかは円に変えなければ、これがポイントですよね。

 

で、そんな状況で、最後のトリガー、米国の牧師のアンドリュー・ブランソン氏が、トルコ国内で拘束されていて、開放する代わりに、米国が保護しているエルドアン大統領の政敵であり、先のクーデターの首謀者とされているギュレン師を開放するという交渉が決裂しました。

そして、IMF(国際通貨基金)も、以前からの経緯でエルドアン大統領とは、かなり仲が悪いので救済に直ぐには動かないでしょうから、トルコリラは紙屑になる可能性が出てきました。

これが、今の現状ね。

 

他の新興国通貨も下がっているけどね

で、ロシアルーブルも下がってる!って話があるんだけど、こうゆう時は、その国の経済の現状と、ファンダメンタルズをチェックしないと駄目です。僕がいつもいってる「現状把握」です。マクロ経済でも、ミクロ経済でもいっしょやねん。

ロシアの場合は、2014年から原油価格が急落して、さらに、ウクライナ問題で、西側諸国がロシアに経済制裁を行った事が重なって、ロシア経済は2015年に落ち込みを見せましたけど、現時点の2018年では、原油価格も戻り、かなり立ち直ってきています。

そして、ロシアの現在の経常収支は黒字!であって、かつての様な、不健全な「輸入超過」の状況ではありません。

 

しかも、ここが大事なんだけど、ロシアの外貨準備高は、4580億ドルもあるのです!これは、ルーブルと言えば1998年8月のルーブル危機ですが、その時の外貨準備高は124億ドルです!

ね、経済とファンダメンタルズの現状を見て、ルーブルも暴落すると思いますか?だったら、ユーロも、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャも一緒だということになりますよね。影響はこれから出てきますが、そこまでは落ちていませんよね。

 

まあ、投資家というものは、このように神経質に反応する訳だけど、それこそが、市場の餌であり栄養でもあり、流動性の一側面です。

特に、新興国通貨のスプレッドが大きくなり、不安が醸成され始めると、ほんのちょっとしたきっかけで、他の新興国通貨にも不安がひろがり、売られます。これが、ルーブルと、ペソへの影響ですね。

すると、その下げを見て、さらにトルコリラが売られます、すると、ユーロがなどという感じで、ますます、連鎖が拡大し、全体的に下がっていく、、、

これが、現在の資本市場で見られる「フィードバック・システム」と言われるもので、負の連鎖が、ITの進化によって、高速度で波及されてしまうことを言います、、、

 

だからこそ、スピードを優先するAIによる取引でないと間に合いません、すぐ先の未来では、人が画面を見てドレードする事など、市場での餌にしかならないと思います。

実際、FXに関しては、スパコンの能力、交換所までの距離と通信速度で、圧倒的に差がつきます。

某金融機関勤務の為替トレーダーは、個人投資家の設備では、どうする事も出来ないし、たまに市場で業火の様に個人投資家を焼き尽くすことがあって、これはフェアじゃないけど、それを理解していないだから仕方がない、という事を聞いてから、僕自身はドレードする事はほぼなくなりました。

こうゆう事実を知っていて、FXをされるのはいいんですけど、僕はいろんな事を理解したうえで、わざわざやる事はないでしょう、というスタンスです。

 

国家が優先か、経済が優先か

さて、トルコリラに戻します。

ことここに及んで、エルドアン大統領は国民に「ドル、ゴールドを売ってトルコ・リラにしろ!」と訴えています。

正直、このエピソードひとつとっても、エルドアン大統領は「金融市場のことは、何もわかってない」ということが分かります。あえて書きませんが、自国民をなんだと思っているんでしょうね?思っていないのか、理解できないのか、、、

確かに、エルドアン大統領の立場になってみると、「もう選挙が終わったのだから、経済がどうなろうと、エルドアン政権は痛くもかゆくもない」という事なんですよ。

あのね、軍も掌握して、権力が集中して、オスマントルコ帝国のシャー(王様)になったのだから、今後10年どころか、終身政権に君臨できるわけですよ!

この視点を、投資家としては持つ必要があると僕は思います。

歴史上、共和的な政治体制から、権力を掌握してなった王様ってのは、国民の生活よりも、自分の権力を維持するものではないでしょうか?

そりゃそうです、権力の集中を維持できなければ、自らの身が危ないのですからね。命とお金だったら、そりゃ命です。

 

だから、西欧や先進国の常識で捉えると、現状認識を間違うんじゃないのかなって、、、

トルコ経済の場合は「総選挙の結果、トルコ経済に破綻が出た」のではなくて、政権奪取のためには、経済がズタズタになる事も織り込んだうえで、それでも、政権を確固たるものにしなければ、クーデターで自分の命すら危うかったのだから、もう、突っ走るしか、なかったのではないでしょうか?

で、その結果が、このようにトルコリラという通貨の暴落として、トルコ経済に生じたわけですよ。

 

特に僕が、あーあと思ったのは、エルドアン大統領が、明確に自国の中央銀行に圧力を掛け、最終的には、金融政策に素人の娘婿に、中央銀行総裁を挿げ替えたことです。

これって、通貨の信用を貶める、めっちゃあかん事です。

通貨の番人である中央銀行に、過大過ぎる圧力をかけるというのは「市場にを敵に回す」と同義語だからです。

で、もう、今の時点に至っては、市場は機能をしない、つまり投資家とは対話ができない、つまり、トルコの銀行は、この先倒産するしかないのです、、、

そして、トルコのインフレはますますインフレになり、経済は破たんする、、、

まあ、そんなリスクを背負っても、政権を奪取したんだから、暴力装置を作動させるか、米国と対立を続けるか、いろんなプランはあるのでしょうけど、、、

トルコの街で起こるのは、銀行が閉鎖されて、軍隊が街に配備されるんでしょうな、、、悲しいけど、これが現実ね。

保有している通貨が、価値を失うという事の本質を、僕は皆さんに知っておいて欲しいのです。

だからね、スワップ金利が高いから、金利が高い国の通貨と交換して、タイミングがいい時に戻すって事で、FXやっているんだとしたら、なぜ「金利が高い」のか、という事を、よーく、よーく、よーく考えて欲しいんです。

 

全ての経済行為は「資金を差し出す」という行為です

僕ね、いろんな方と話していて気づいてるんだけど、日本人は「金利」という概念を理解していないんだよね。

「金利」という事を話すと、大部分は「投資家視線」でしか、考えていません。

つまり、いくら預けて、いくら増えるのか、ということだから、少しでも高い金利がいい!高金利ナイス!ってなことで、強欲になっているんじゃないのかなって思うんです。

 

でもさ、もし、ご自身がお金を「貸す」方だったらどうですか?

 

例えば、皆さんが貸金業として、自分のお金を貸す立場だったらと仮定しましょう。

ある日、よくわからない使用目的で、担保もなく、収入も安定しないけど、でも、少しづつなら長期返済できるから、今すぐに現金を貸してください!っていう人が、お金を借りに来られたら、どうしますか?

この場合、皆さんはそのに金を貸しますか?

僕なら、貸しません(笑)だって、お金が戻ってくる保証は無いから!

まあ、あげるならいいけど(笑)それには、人としての深い関係性があるか、額が少額か、などという必要条件があります。そして、その方に、個人的に共感できなかったら、絶対に貸さないし、出さないです(笑)

 

でも、事業として貸す、というのであれば、金利はめっちゃ高くして、貸す可能性があります!

なぜなら、貸倒のリスクに見合った分だけの報酬が伴わないと、事業ではないからです。

事業とは、継続せねばならず、そのためには利益を産み出す必要があるからです。

そのリスクと、利益がバランスるなら、貸す可能性はあります(笑)

 

とまあ、このように「高利貸しで金を貸す」という行為と、「投資家としてトルコリラや、トルコリラ建ての投信などを買う」という行為は、ルックスルーするとまったく一緒の行為です。

その行為を説明すると、どちらも「資金提供者」になるという意味だからです。

となると、高金利!と騒いで、より金利が高いものを探すという行為は、一番、貸付金を踏み倒される可能性が高い、訳のわからんアブナイやつを探しまくって、金を貸している!ということと同義語なんですよ!

「銀行の紹介があったから」、「知り合いもやっているから」、「マネーセミナーの講師が進めたから」、理由は何か知らないけど、この本質を理解している方が、自身の保持している円を使って、わざわざトルコリラ建てで何かを購入するなんて事はするわけがないのです。

 

金利には適正な水準があります

日本の場合、金利が自由化されたのはつい最近の1970年代からで、それ以前は政府によって細かく統制されていました。

だからなのか、日本の場合、金融機関に所属している方であっても「金利」についての嗅覚がおかしいのではと思う事が多々あります。

銀行であれば、以前であれば預金獲得競争や、今でも続く貸付金残高競争という量というか、ボリュームの競争であって、金利の本質的な理解ができているとは思えないですし、代理店としての金融商品販売でも、リスク説明はあっても、本質的な利回りの話は、全くできないし、定期預金にしていただければ、金利が0.1%ですしって、あんた、それ本当に理解していってるの?って感じです。

証券でも、儲かった、損したという話は多いけど、手数料までも含めた利回りの話は聞いたことがないし(笑)まあ、僕のいる生命保険業界だって、予定利率と金利を一緒に話している〇〇が多いし、そもそも利回りの概念すら怪しいという状態です。

 

でも、ある程度の年齢層は、記憶にある過去の経験が、高金利よ、また再びを思い起こさせます。

それが、1970年代の郵便貯金の定額貯金の8%とかのイメージです、確かに「高金利」です。それに、郵便貯金は国が実質保証しているんだから、安全で大きなところがやっているものは大丈夫!なんてイメージがあるのか「高金利」というキーワードに、コロッとやられているのが実状です。

ほんとうに、簡単に騙されますね、、、悲しいけど、これが現実。

 

また、金融商品を販売する金融機関主催のセミナーに行って、勉強したつもりで理解していないから、いつまでたっても、高金利を担保する仕組みが理解できなくても「高金利」につられて、理解しないままに買わされる、、、

まあ、勉強と称して、セミナーに参加しても「自分の頭で理解する」ところまで考えないから、何事も、学んでいるふりをして、本質的な理解をしない人ほど騙されるんだけど(笑)

まず、この「高金利」に引っかからないようにしないと、いつまでたっても騙され続ける、言い換えれば、市場の餌になり続けるしかないんだと思います。

 

ちなみに、ほんとうにファイナンスを理解してくると、金利には適正水準「スイート・スポット」とでも言うべきものがある事が分かっているので、ファイナンシャルリテラシーを持っているもの同士では共有されています。

それは、株式利回りでいえば、3%~5%という水準です。

これが、プロの世界では高すぎもせず、安すぎもせず、不確実性の少ない、丁度いい魅力的な水準なんですよ。

 

さて、この3%~5%と聞いて、どう思われますか?

これを低いと思うなら、ごめんなさい、、、それはあなたが、市場の餌になってしまう可能性を示しています。

本質的な理解がない、という証左でもあります。どうぞ、ご自身で理解できるまで考えるか、銀行預金に置いて置かれる方が安心ですよ。

だってさ、経営者の皆さんにお聞きしますが、皆さんが経営する事業の利回りって、総資本営業利益率という指標で表されますが、何%ですか?

総資本経常利益率(ROA)= 経常利益 ÷ 総資本

で、これが5%以上あったら、経営分析でも、銀行格付けでも、素晴らしい!って言われる指標ですよね!

これ、ルックスルーして考えたら、あなたの事業の利回りは年利5%と同義語ですよ。

つまり、事業として素晴らしい!と言われる5%を、金融商品で得ようとするなら、そりゃ株式投資になるだろうし、それも、上場している会社が、みんなそんな利回りじゃないことぐらい、わかりますよね!

これが理解できれば、金融商品で10%だ、15%だというのは、長期運用期間の複利効果がない場合では、何かとてつもないリスクと交換の上で成り立っているものだ!いうことに、お気づきになりませんか?

特に、為替というものは、国家間の関係性や、経済の状況、ファンダメンタルの要素、それにトレーダーという行動経済学の側面の人の心理など、可変要素が多すぎて、最も予想がしにくいものだとも考えます。

 

まあ、経営者の皆さまに置かれましては、ご自身の事業のROAが高いのであれば、事業に投資する方が、よっぽど金融商品を購入するよりもいいと思いますし、不確定要素もかなり排除できる資金提供ですしね。

また、金利3%~5%でも、当面使わないで長期で複利運用できれば、これはめちゃくちゃ効果がある訳ですよね。

お盆休みの方も多いかと思いますので、ちょっと考えてみてはいかがでしょうか?

 

追伸、

ちなみに、トルコリラ、暴落したからと言って、ロングするのはお勧めしません!これから、リラ建ての債券のプライシングが出ないとか、債券が暴落するとか、そうなると、トルコの銀行が倒産するとか、トルコの株式市場が閉鎖されるとか、それが欧州の各国や、銀行に波及するとか、相当シビアな問題が発生します。

これを終息させるのに何が起きるのか、まだ分かりませんから、世界はリスクオフに動き、円は買われることになります(円高)全部を見通すことなどできませんが、FXについてはわからないなら、ポジションをとっとと手閉まるのがいいと思います。

分からないものに資金を提供するのは、おかしいですからね。

The following two tabs change content below.
木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

記事を気に入ったらシェアをしてね

  • twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket