保険料の資産計上分は、資金繰りに「めちゃ」影響します

会社を経営していると、こんな感覚にとらわれることはございませんか?

 

「売り上げも上がっているし、代金回収もできている、従業員の士気も高いし、

 顧客からの引き合いも多い、実際、税理士からは試算表を見ると、

 利益がかなりでてるので、紹介された生命保険に年払で入った、

 そうしないと、税金がかなり出そうなので…でも、どうも手元のお金がない

 従業員さんたちにも喜んでもらいたいので、ぱーっと打ち上げしたいけど、

 やばかった、自分のカードを切るしかなかった。でも、まあ、銀行さんも

 「社長、大丈夫です!事業も好調だから、融資しますので、一本、この際、

 借りてください!」ってことで、まあ、そんなだから長期間は借りる気もないから、

 3年で1,000万借りてみたけど、さほど、資金繰りが良くなった気がしない、

 なんでなんだろう?」

 

ごめん、長いね、超、長いね。

 

でも、こんな感じになったこと、ありませんか?売り上げも上がっている、利益も出ている、生命保険を使って節税もしているのに、資金繰りが良くなっている気がしないし、気付けば、長期借入金は、たいして減っていない!っていう感覚です。

これ、誰にも相談できませんよね。社長以外の登場人物は、自分がしたことは撤回できないし、否定できないし、自分が間違ったことを勧めたわけだから、、、それは、相当の覚悟がないと、できないでしょうね。

だから、僕の大好きなお客様には知ってもらいたいから、書きますね。思い当たることがあれば、検証してみてくださいね。

 

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さて、金融業界につとめるものとして、特に、生命保険募集人として、僕が経験してきたことをお話し致します。

僕の場合、生命保険の契約を募集する仕事、つまり営業なんですけどね、日本の税制に、ちょっと特殊なところがあって、生命保険契約を法人が契約する場合、その生命保険契約の種類、契約形態によって保険料の経理処理が、資産計上されたり、損金算入されたりするんです。

 

まあ、ここまでは、税制というルールなんだけどね。ただ、そもそも生命保険契約ってのは、対象者である被保険者が、亡くなった場合などに支払われる保険金を目的として、事業継続の保障とかの目的で入ってもらう訳です。

そう、ある意味「賭け」をしていただいている訳ね、言いかた変だけど。その賭けに勝つと、受取人である法人に、掛け金のなんぞの何倍もの保険金が支払われるわけです!まあ、これが保険ということです。

 

でもね、それは事故があった場合で、事故がなく、保険金が満了すれば、満期金が支払われる保険もあるし、単純に保険期間終了だから、それまでの掛け金は掛け捨てになる、そう、賭けには勝てなかった、という種類の違いがあったりする訳です。

 

ね、すげえ単純化すると、損害保険などは、もろ、この賭けという話なんだけど、生命保険契約の中で、仕組み的に途中で「解約」したら解約返戻金というキャッシュが支払われる生命保険契約があるんです。

そう、途中で解約したらお金が返ってくる生命保険契約があって、もし、その掛け金が経費だったら、法人から見た場合、経費で貯金していることになりなせんかって考えた人がいて?

だから、

「社長!、利益が出たんですね!それ、そのままにしておくと法人税が掛かるんで、

保険だと経費で貯金できるんですが、やりませんか?」

っていう、誰もが聞かれたことがあるであろう、生命保険募集人の「損金トーク」というヤツが炸裂する訳です(笑)

 

はい、僕も以前はそんな感じの時期もあったので、何も言い訳ができなんですけど(汗)まあ、それがほとんどですわ。そればっかって言った方がいいかも。。。

 

最近の日本での法人税の実効税率は、どんどん下がっているし、課税前の法人所得が800万円以上なければ、法人税の実効税率は35%ではなく30%ぐらいなものです。

この説明もないままに、提案している生命保険募集人が多いから、いつまで経っても大事にされることがない業種になっている訳ですね。残念ですが、これは事実。

 

だって、現在の経済環境なら、適切な納税をしながら、自己資本比率を高めて、財務を改善して、いつでも資金調達ができるようになっていれば、事業の継続もしやすいし、事業の承継も、事業の売却もし易くなるのに。

会社経営の本質的な目的は「事業の継続」ですからね。

 

しかも、その結果が中小企業の約70%が赤字決算である、というこの事実です。まあ、法人税なんて、世界的な税法で考えたら、個人所得と、法人所得での二重課税だから、もっと下げたほうが、再投資なり、分配なりに回るからいいんですけどね。

 

確かに実際には、納税すると、予定納税というみなしの納税があって、キャッシュがロックされる(消費税も預かり税だから、これもロックされてますよね)つまり、キャシュフロー的に見ると、納税が多くなるとキャッシュフローが悪化する、という別な側面があって、適度な納税額にしたい、というお気持ちは、とてもよくわかります。

だから、これも現実なんだけど、黒字決算をしている会社(全体の30%)の約40%は、キャッシュフローは赤字っていう現実もあるんです。

 

さて、このキャシュフローという視点で、生命保険契約を法人が契約する場合の、保険料の経理処理が、資産計上されたり、損金算入されたりする意味を知って頂きたいのです。

そう、保険料のうち、「資産計上される」というのは、貸借対照表(B/S)に記載されますが、それが現預金と同じ、ということではありません。

そう、確かに資産ですが、現預金と一緒ではありません!

 

だって、現預金は、金庫や、預金口座にあるから、資金繰りにいつでも使えますので、キャッシュフローという観点からは問題がありませんが、保険料の資産計上分は「保険会社に支払っていて手元にはありません」からね。

つまり、資金繰りには使えないので、純粋なキャッシュアウトであることを、知っておいてくださいね。ね、現預金とは違うでしょ!

 

さて、ここで、キャッシュフローを簡単に振り返りますね。

キャッシュフローってのは、めちゃ簡単に言えば、「銭の流れ」そう、現金の話です。商いは、現金取引以外に、信用取引がありますので、現金支払いのタイミングが違うことで「資金繰り」が必要になりますよね。

めちゃめちゃ多くの売上があっても、現金、つまり銭が手元になければ、支払いできず、事業は継続ができません。これが「黒字倒産」の実態ですし、その救済処置として「民事再生法」という法整備があります。

その支払いがでいないと、取引が継続出来なくなる最大の理由は、借入金の返済という支払いが滞ることですよね。そう、借入金の返済、つまり借金の元本返済は、現金でないと支払うことができません!

ここでの注意点は、金利は「経費」なので、損金算入だということです。元本返済は、決算書への影響のない、純粋な手元の銭なんです!これ、理解頂けますよね。

 

これらをまとめると、決算書(試算表だと当月で読み替えてね!)から、必要キャッシュフローを読み解くためには、こんな視点が必要です。

 

キャッシュアウト(現金でしか、払えないもの)

= 長期借入金の当期元本返済額合計 

+ 生命保険料の当期資産計上額合計

 

なんです。

となると、もう一つの視点は、こうなります。

 

キャッシュイン(現金の増加分と、手元にある支払い可能な現金)

= 当期営業利益(支払利息が多い場合は経常利益)

+ 当期減価償却実施額 

ということは、

キャッシュアウト=キャッシュインであれば、もしくは、キャッシュアウト<キャッシュインであれば、長期借入金って、その借入期間が満了したら、完済しますよね!だって、インのほうが多いんだから、手元にキャッシュが残りますからね。

 

ならば、キャッシュアウト>キャッシュインの場合はどうなりますかね、、、

 

キャッシュアウト>キャッシュインですから、手元のキャッシュは足りませんよね、では、事業を継続するには、どうしたらいいのですか?そう、現金をどっかから調達するしかないんですよ!調達って、方法は利益か、出資か、借入金かです。

ということは、また借入金が増えるんですけど、、、

この、キャッシュインとキャッシュアウトのバランスを考慮する視点を、キャッシュフローマネジメント(CFM)と言います。

 

CFイン(当期営業利益+当期減価償却実施額) 

 VS 

CFアウト(長期借入金当期元本返済額+保険料資産計上分)

 

皆さんが決算書を作られる時に、キャッシュフロー計算書(CF)も一緒についてくると思いますが、ここでチェックが可能です。

え、付いてこないって、説明を受けたこともないって、それではその税務顧問、使えませんな(笑)今は、会計ソフトが進化していますから、決算書を作成するプロセスで、ボタンを「ポチ」って押すと、CFは作成されます。

それの使い方や、提示すらないのであれば、その方には、資金繰りの相談をしても「無駄」ですね。残念ですが、これが現実ね。

 

では、最初のお題に戻りますが、例えばこの計算式で、保険料の資産計上額が、年間400万円あった場合、つまり、もろもろ色々合わせて、保険料の1/2損金と言われる契約に、年間保険料800万円を支払っていたら、半分の400万円が資産計上だからこうなりますけど、これって、借入金2,000万円の5年返済分の年間元本返済分と一緒ってわかりますか?

つまりさ、この生命保険契約で、簿外に利益を貯めるとか、まあ、事業のための保障でもなんでもいいんだけど、この資産計上分は、長期借入金5年2,000万円の返済に匹敵するわけだから、現金が手元になければ、借りなきゃいけないか、もしくは、この分は元本返済に回っていないって事に気づきませんか!

 

この事、僕も昔はわかりませんでした。で、この事、明確に書いてあるテキストを見た事もないし、明確に回答する生命保険募集人に会った事も、僕はありません。

もう、借入金も少なく、営業利益も大きな企業さんだったら、別に何も問題はありませんが、得てして生命保険加入を経営者の皆さんが検討されるときは、今期利益が出た!というタイミングだったりします。

来季以降はどうか、現在、キャッシュフローは手元にあるけど、それはいろんな形で支払い(予定納税など)に使う必要が出てきたりもします。それに、生命保険料は続くのです。今期の年払一回分で税効果があるものは、ほぼ、存在しません。

 

でもね、キャッシュフローマネジメント(CFM)の視点が、生命保険募集人にも、経営者の皆さんにもなかったとしたら、もっと言えば税務顧問にもなかったりするので(資金繰りの話と、税務の話は違いますから)知らないと、誰からも指摘されないまま、資金繰りへの影響が発生し、借入金の返済は進まず、じわじわと借入金は増大していきます。

今の僕は、お客様に対して決算書や試算表を拝見しながら、仕事をしています。

そうしないと、資金繰りに影響が出ることを知っているからです。財務の場合、知らないことは、知らないで済まないほど、経営に影響を与えますので、せめて、経営者の皆さんには知っていただきたく、まとめさせていただきました。

資金繰りの相談相手は、この視点を持っている人としてくださいね!僕自身は、自省を込めて、こんな発信を続けていきますので。

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木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

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