資金繰りは事業継続の生命線、注意したい8つのポイント

前回の続きを、性懲りも無く書き続けます、ざっきーです(笑)経営者専門の保険屋さんです。財務という切り口で、大好きなクライアントの事業価値を高め、リスク(不確実性)から経営者の皆さんをお守りして、その結果、日本の雇用の大部分を支える中小企業が元気になって頂いて、そこに集う人たちが少しでも豊かになればと本気で思い、仕事に取り組んでおります。

本気かよ〜って思われるものわかりますが、僕の過去がそうさせます。また、現在の僕の業界の環境がそうさせます。僕自身がかつてそうだったように、財務(ファイナンス)知識のない同業者が多く「節税」という、ある側面のみをクローズアップした形での販売が今だに横行し、本当に経営者のビジョン達成に基づいた提案など、ほとんどされていない現実があります。

残念ですが、生命保険契約というのは納品することが少ない商品です。しかも、それを購入したご本人は、納品を受けないことも多々ありますので、本来のご要望と違ってもクレームにならないという側面もあり、不満も少なければ、満足度の薄い商品であることも事実かと思います。

 

僕としては、そんな現状を少しでも変えたくて、財務(ファイナンス)の視点と、資金繰りの本質的な理解を、同業者にも知っていただきたく、こうしてブログで公表しています。

知識なんてものは、自分で持っているだけでは、何の意味もないし、真似していただけるなら、ぜひ、パクってもらいたいとすら思います。それで、本当の意味で、どこかの経営者の皆さんに伝わり、その方々の事業が良くなるのであれば、それでいいのです。

 

幼い頃に仏壇職人の街で育った僕は、多くの同級生の親御さんが自営業者という状況で、その親御さんたちの事業の資金繰りが行き詰まった末に、突然、転校して行く経験をいっぱいしました。そしてその時、その家族に何が起きるのか、関わった人間関係にどんな亀裂が入るのか、、、僕のクライアントには、もう、体験して頂きたくない事です。

今の仕事についてからも、何人もの方に寄り添い、事業の清算と自己破産まで付き合いましたから、いつの頃からか、本質的な話を理解し、血肉化し、真正面から受け止められるようになりました。だから、耳障りの悪いことを申し上げることも多くなりましたが、僕のことなんぞ、切っていただいても構いませんが、ぜひ、資金繰りのポイントは、おさえていただきたく思います。

 

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さて、前回のブログで、8つのやばい時のポイントを提示させていただきました。

 

1、売上が増えているとき

2、売上が減っているとき

3、買掛金の期間が、短期になっているとき

4、売掛金の期間が、長期になっているとき

5、在庫が多くなってきているとき

6、設備投資が多くなってきてるとき

7、無駄な投資をしているとき

8、借入金返済そのものの負担が大きいとき

 

この話を、より詳しくさせてください。

まず、ですが、売上が増えれば、資金繰りは楽になると思いませんか?これ、実は盲点でして、売上が増えれば増えるほど、資金繰りが悪化することがあります。確かに、すべての取引が現金であれば問題ありませんが、売上の増加に伴って資金が入っているのですから、資金繰りは楽になります。でも、少しでも取引に、売掛金があれば、それは資金繰りの悪化につながります。

だってそうですよね、売上の増加に伴って今よりも多くの商品を仕入れたり、サービスを提供しないといけなくなる訳で、それはもう、仕入れに必要な資金がもっと必要となる事を意味しています。特に、売掛金の場合、その回収までは資金の立替が増加する訳ですから、今まで以上の資金が必要となります。この資金の事を、所要運転資金と言いまして、下記の計算式で算出することができます。

所要運転資金=(売掛債権回転期間+在庫回転期間ー買掛債務回転期間)×月商

ほらね、売上が増加するってのは、上記計算式の月商が増えるわけですから、そりゃあ運転基金が必要になることがわかりますよね。だから、資金繰りは悪化するんです。つまり、売上が上がることが見込まれる場合や、売上増加を計画する場合には、事前の資金準備や、資金調達の計画をしておく必要がある訳です。

 

では、次はについて。売上が下がれば、事業に入ってくる総資金量が減る訳ですから、資金繰りが悪化するのは、なんとなく理解いたけると思いますが、それが売上低下による資金繰り悪化のメカニズムではありません。例えば、上記計算式に従えば、月商が現象するわけですから、所用運転資金は減少することになりますよね。

でも、実は、減少しないものがありまして、それは固定費、つまり販売費及び一般管理費は、売上が減少しても変動して減少しませんので、この点において、資金繰りが悪化する訳です。つまり、売上が下がった場合の資金繰りの改善方法というのは、固定費の削減にある訳です。

 

つめの買掛金の期間が短くなっている場合は、いかがでしょうか?まあ、これは仕入れてから、実際に現金を支払うまでの期間が短くなることですから、それは資金繰りが悪化しますよね。

資金繰りという側面から見れば、それは現金支払いまでの期間が長くなった方がいいのですが、とはいえ、自社の資金繰りのためだけで、仕入先に支払い期間をもっと長期にしてくれ、と申し出た場合、資金繰りがそんなに悪いのか、といった印象を与えることになり、取引先としての信用の毀損に繋がりかねません。

また、融資をしている銀行も、買掛金の期間の長期化というのは、資金繰りの悪化を懸念しますから、この点は慎重に対処することが重要となります。

 

4つめの売掛金の期間の長期化はいかがでしょうか?これは一番わかりやすいのですよね、売掛金の期間が長くなる、というのは資金の回収に時間ってしまうということなので、資金繰りが悪化しているという状況になりますので。しかも、この売掛金の期間が長くなる、という状況の背景にも、問題が潜んでおり、その点が最も問題になります。

そもそも、なぜ、売掛金の期間が長くなったのかの理由が問題で、3つぐらいの背景が考えられますよね。1)取引先からの支払い条件の見直しの要請のため、2)取引先自体が資金繰りが悪化しておりなかなか代金回収ができない場合、3)最後が意外とよく起こるケースで、こちらから取引先に対して、請求が遅れている場合、というものが想像できます。

1)と2)は取引相手との関係がございますが、3)については社長が多忙のため忘れたとか、担当者ごとの請求書の管理ができていなくて遅れたなどのケースがあり、銀行から見た場合、事業そのものに対しての印象がとても悪くなりますので、注意していただきたい理由となります。

そもそも売掛金の期間が長くなるというのは、事業そのものへの悪影響以外に、その理由如何によっては、さらに印象が悪くなることもあり得ますので、注意を払っていただくことが大切かと思います。

 

5つめの在庫が多くなったという状態も、イメージはしやすいかと思います。在庫はなければ、資金化のチャンスを失いますので、必要なものですが、在庫を抱えるには資金が必要となります。また、この在庫が現金化できなければ、さらに資金は不足しますので、適正な在庫量を維持するのが必要となります。

適正な在庫量とは、固定費の支払いが1ヶ月単位でありますように、概ね売上の1ヶ月分と言われています。さて、皆さんの会社の適正な在庫量を算出するときは、毎月の棚卸しを実行して検証しなくても良い方法がございます。

下記の計算式で在庫回転期間と呼ばれる数字を、月次の試算表でチェックすればいいのです。

在庫回転期間=在庫 ÷(年商 ÷12)

この期間が、例えば在庫が3,000万円で、年商が1億5,000万円だったとしますと、2.4か月となり、これが決算書や試算表では、増加しているのか、減少しているのかなど、時系列で確認することで、在庫による資金繰りの悪化を事前に把握することにもつながります。適正な在庫回転期間を求めることによって、資金繰りへの影響を防ぐことができるわけです。

 

つめは、設備投資資金が多くなっている時です。設備投資資金の特徴は、設備投資にかかった費用を分散して費用化する、つまり減価償却費となることです。しかし、一時的には資金を先に出してしまいますから、資金繰りは悪化します。そのため、資金繰りの悪化を避けるために、銀行の融資を利用して資金手当を行いますが、最大のポイントはその融資の期間です。

本質的には減価償却の法定耐用年数に合わせた返済期間であれば問題ありませんが、概ね銀行の融資というものは30年等の長期は扱いません。また、借入金を避ける傾向がある経営者の場合、早く返済が進むことから、3年などの期間で借りられる場合も多いのですが、借入金の元本返済金の原資は、キャッシュフローそのものですから、3年などの期間の場合、間違いなく資金繰りは悪化します。なので、できれば長期間がいいですし、事業というのは、いい時もあれば、悪い時もありますから、資金繰りに影響の出ない無理のない返済額にすることが重要なポイントとなります。

 

つめは、何をもって「無駄な投資」というのかは意見は分かれますが、銀行の視点はめっちゃわかりやすいです。それは、事業以外のこと全て、という視点だからです。概ね、本業とは関係ないと思われているものと言いますと、ゴルフ会員権、リゾート会員権、投資有価証券、多大な保険料積立金(笑)などです。

これらは、事業には関係ありませんので、一度流出した資金は固定化してしまい、会社には戻ってこないという見方をするからなのです。

また、財務内容の良い会社の場合、このような事業以外の固定資産というのはほとんど所有しておらず、固定資産が軽く、流動比率も高いし、そもそも資産が毀損したりしないので、結果、決算書の格付けも高く、資金効率も高いため、ますます資金繰りは良くなっていくという状態となります。

事業以外に投資をした場合、どうしてもその投資に対して資金を必要としますから、おのずと常に資金繰りを考えねばならなくなってしまいます。事業以外の投資というのは、資金繰り悪化だけでなく、銀行の視点からも皆さんの会社の評価が下がりますし、当然、利益に直結しているわけではありませんから、経験判断を求められる投資であり、それがB/S(貸借対照表)に現れるため「B/Sは経営者の性格を表す」などとして、金融機関から見られる所以となります。

 

最後のつめは、設備投資のところでも触れましたが、借入金そのものが大きい場合、おのずと返済金額も大きくなりますから、資金繰りは悪化します。

基本的に運転資金目的の借入金というのは、金利を検討するのではなく、借入期間を検討すべきと考えます。現在は低金利の時代でもありますから、金利の負担という視点ではなく、資金繰りの適正化という視点で考えると、できるだけ長い方がいいと考えます。

借入金を単なる借金として捉え、早く返済しなきゃ、というのは財務(ファイナンス)的には間違いです!返済負担が大きければ、必ず資金は足りなくなりますから、さらなる追加の融資の必要性なども発生し、銀行の視点から見ましてもマイナスの点が多くあります。つまり、借入金額の絶対量だけでなく、返済期間という返済量も資金繰りの悪化に関わっていることをご理解くださいませ。

また、長期で借りられるというのは、銀行から見た場合、格付けが高いからこそできる、資金の調達方法となります。銀行から提示される最大の返済期間は何年なのか、というのは皆さまの会社の信用格付けが明確に表現される指標の一つですよね。これを利用しない手はないと考えます。

 

またまた長くなりましたが、少しでも参考になればという思いは変わりませんし、どうぞ、これは当たり前の知識ですから、どんどんパクっていただいて、経営者の皆さんに届くといいなぁと思います。現在の日本の経済状態は、右肩上がりではありません。ということは、資金繰りに関しても、今を乗り切ればいい、という過去のやり方のままでは、少しづつ悪化していくことは、明確な事実です。少しでも現状のやり方、あり方、考え方を変えて、少しでも方向性に角度を付けることができれば、確実に改善ができます。

資金繰りは、改善ができれば、必ず効果が出ます。どう出るって?手元の現金(キャッシュ)が増えますので、利益よりも明確に効果が確認できるからです。僕のやっていることは本質的に資金繰りというリスク(不確実性)から経営者の皆さんをまずお守りしたい、そんな気持ちは保険屋だからなのかもしれません。これ、伝わるといいなぁ。

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木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

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