つい最近、
あるクライアントの、
事業清算の相談に乗っておりました。
そう、
法人としての破産です。
で、
その際に、銀行借り入れなど、債務がありますので、
個人としての自己破産も選択することになります。
「借りたものを返す」
これ、資本主義の原理原則ですし、
実は、
「信用」という目に見えない資産の劣化を伴う事になります。
で、とても感慨深かったことは、
この方、資金繰りをご自身でやっておられなかった経営者だったのです。
そう、
先代が、全ての資金繰りを握っていました。
でも、経営の実権はあったのですよ、
投資判断とか、
経営戦略は、任されてましたし。
その方の言葉です。
「連帯保証債務」について、本質的な意味を、
こうなる前に、理解しておきたかった、、、
なので、書いてみることにしました。
こんな話、読みたきゃないでしょうけど。
事業を行う場合、
どうしても信用取引の多い日本の場合、
売上がたっても、
入金に時間がかかり、
資金ギャップが生まれるため、
手元に余分なキャッシュを持つことが必要となります。
で、
そのキャッシュをどう準備するか、
なのですが、
概ね、3種類。
1、他人資本(間接金融、つまり銀行融資)
2、自己資本(資本金)
3、繰越利益剰余金(利益)
です。
日本の場合、基本的な資金調達は銀行から
さて、日本の場合、資本金を出資するというのは、
それほど一般的ではありません。
例えば、アメリカだと、
ハワイあたりでも、従業員2から3人で、
売上1億円ぐらいのスモールビジネスなら、
資金は銀行じゃなくて、資本金で調達します。
ぶっちゃけ、僕にださないか、なんて話が来るぐらい(笑)
なぜかっていうと、銀行って、相当、敷居が高く、
ある程度のトラックレコードがないと、
話になりません。
しかも、返済しなきゃいけないので、
資金繰り的には、資本金のほうが使いやすかったりするのです。
だから、
資本金調達(エクイティ)のマーケットがあり、
うまくいったら、リターンがるし、
リターンを早期に回収するためにも、
返済なんていらないから、
とっととビジネス回せよ!と。
また、ダメなら、
とっとと辞めろよ!って、事なんだそうです。
そう、
ダメなら、やり直しが効く、というコンセンサスが、
社会にある訳ですね。
そもそも、資本調達コストは、
資本金(直接金融)>融資(間接金融)ですので、
株主からの有形無形のプレッシャーや、
取締役会の上位にいるのが株主ですから、
リスクとリターンはトレードオフだとすると、
普通のことなどだと思います。
家族経営のビジネスであれば、資本金の出資者は、
経営者本人であることがほとんどなので、
資本金の出資から始め、内部留保を蓄え、
その上で、資本回転率を高めるために、
間接金融を調達するという図式となります。
日本独特の慣習かも、
ところが、江戸時代から、日本の場合は、
約束手形融資(ツケ)の文化があり、
庶民の決済すら、年末までの間接金融によって
成り立ってきた背景があります。
知識階級の武士の俸禄は年一回だし、
その源泉となる米の収穫は年一回、
当時は月給なはずがなく、
商人などの信用創造によって、
決済が支えられてきた訳ですね。
そのような背景から、
信用取引の商慣習が作られ、
明治期以降、当時の近代国家が採用した
資本主義のシステムが導入されても、
和魂洋才の点からも、資本市場もありましたが、
間接金融市場(銀行)が整備されるわけです。
これが、太平洋戦争の終結後、財閥解体などの政策や、
そもそも、資本の出し手が限りなく少なくなった戦後に、
国策としての間接金融機関が多く生まれ、、、
焦土の中から立ち上がったビジネスというのは、
基本、
スモールビジネスで、家族経営だった訳です。
借りた金を返す意味、
間接金融の代表格である銀行は、
お金を余っている方から預かり、
お金を必要とする方に貸します。
必要でないところから、
必要なものを生み出す、
これが、信用創造です。
で、よく考えてください。
晴れている時に傘を差しだし、
雨降っている時に傘を取り上げる
と、揶揄されますが、
そもそも、お金は、銀行のものではありません。
だれのものかというと、
預金者のものなのですね。
そう、自分に置き換えると、
よくわかります。
自分の預金したお金が、
勝手に使われ、
回収不能になるなんて、
許せなくないですか?
だから、回収できるところにしか、
貸せないのです!
貸さないんじゃなくて、
貸せないのです!
預金と貸付金というのは、
債権債務の写し鏡だと思えば、
納得できるかと。
確かに、会社法は、法律に基づく破産を認めていますが、
破産さえすれば、債務がなくなる、という状況では、
お金を預けている方、
心配じゃないですかね。
だから、信用のレベルによって、
会社(法人)だけではなく、
そのオーナーである個人の連帯債務保証をとる訳です。
そう、ここがポイント、
「連帯債務保証」は、家族にとって、負の財産です。
もし、オーナーに万が一の場合、
連帯債務保証は、個人の相続財産として、
家族が引き継ぎます。
あの、
引き継ぐの、法人じゃなく、家族ですよ。
もちろん、家族が経営も引き継いでくれるなら、
それは、覚悟して引き継ぐでしょう。
もちろん、家族や、親族や、身内が、一致団結していれば、
引き継いでくれるでしょう。
これは、本当に理解していないと、重い問題です。
また、別な機会に、掘り下げますね。
木﨑 利長
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
(※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)
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